「プラスチック」

その白と薄茶色の猫は。空を見ていた。
風も無いその夜の中で。
向こうから男が走って来た。
それに気が付いて、塀から降りた。そして、最近の寝床へと急いだ。
夜の10時だった。
音の無い夜だった。希望も姿を消し。誰もが冷たさを感じている
そんな夜だった。
猫は丸くなって眠った。いつもの様に。外で、眠った。
男は一人、静かな部屋で文字を書いていた。ひどく心細い状態だった。
一日中外に出されていた植物達は疲れてもう眠っている様に見えた。
この部屋でまだ起きている唯一の男は、明日への不安、そいつを
持て余して、どうしたものかと思っていた。
いつか、広い静かな、安心できる暖かい部屋で、
不安も無く暮らしている。そんな夢みたいな未来を実現させようと
思っていた。
終わった恋や、進展しない恋、自分へのもどかしさや、自分の現在地。
そんな、もやもやが彼の足を止めていた。
全部、思い通りに行けば良いのに。と彼は思っていた。そうしたら、まず、
彼女にキスするのに。と。暖かいものが、心の中に流れ始めた。―4/12(日)

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