「サァサァ、ここに座って一杯やんな。」
「あぁ、どうもありがとう。ブドウ酒かい?」
「アァそうだよ。だんな 落ちついたかい? それで、どうしたん
だい、こんな夜中に血相変えて」
「フウ。いやね。今考えてる小説の展開が思いつかなくて
イライラしてたら 窓の外に犬が見えてね」
「犬? ノラ犬ですかい? それで飛び出してきたんですかい?」
「いやぁ、その犬がね 何かくわえていたんだよ。
それでさぁ よく見るとそれが人の手の様に見えたんだ。」
「うぇ、それ本当の話ですかい? 警察に連絡しましょうかい?」
「いや ギョッとしてよく見てみると木の棒と軍手だったよ」
「なんだ じゃあそれは関係ないんですかい?」
「ああ、ウチの小さいのが最近いたずら好きでね。僕を
驚かそうとするんだよ」
「小さいのって誰ですか?」
「ほら、あの、あれだよ」
「何、何、何ですか?」
「別に。」
「ん?」 ―3/25