「クールセイダーズ」

 目が覚めたら、15時だった。

 嘘だろー!?って思ったね。本当。んで、今、1時30分。

 「こんにちは。」丸椅子に座ると、目の前の先生は一言そう言った。
 「こんにちは、よろしくお願いします。」と僕は言った。
 「周りの人がジロジロ見るんだって?」30代前半くらいの精神科の先生はそう言った。魅力的なキレイな人だった。僕は最近の出来事について、その先生に洗いざらい話した。ひどく疲れていたのだ。こりゃ、流行の統合失調ってやつかなと思い始めていたのだ。
 「そうね、ジロジロ見られるのも無理ないわよ。あなた、結構、キュートな顔してるもの」
 「え?」
 彼女は案外真面目にそう言った。こりゃ、からかわれてるなと思った。同時に、ちゃんと、診断してくれよ。と、少しイラッとした。
 「あの、冗談じゃないですよ。ちゃんと診断して下さいよ。」と僕はやや強い調子で言った。
 「あのね。」と先生は少し疲れた様に言った。「あのね。あなただけじゃないのよ。ジロジロ見られてるのは」
 ああ、そうか、と思った。流行の病気だから、自分と同じ様にやってくる人が多くて、先生も、いちいち対応できないんだと。

 「私も、しょっちゅうよ。」
 「え?先生も?」
 「そうよ。私なんかね、電車の中ではサラリーマンのオヤジにジロジロ、必ず見られるし、街中では、ダサイ男達に品定めされる様に見られるんだから。だからね、あんたのなんか、かわいいもんよ。」そう言って、先生は僕の目をじっと見た。先生の顔はやややつれて、少し頬がこけていた。それでも、十分に魅力的だった。
 そりゃ、そうだよな。と僕はしんみりしてしまった。
「先生も、大変ですね。」僕が同情する様に言うと、先生はやや笑って、「あんたに心配されるほど、ヤワでもないのよ?」と言った。
―2015/10/11(日)

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