雪の降る日、
その旅館には
カップルの宿泊客が多かった。
その日も、四時頃になって、
30代くらいの男女がやって来た。
その男は、予約している旨を告げると、
重そうな荷物を玄関の床におろした。
聡明そうな、連れの女性は、
「きれいなとこね。」彼女は男に言った。
「ああ、そうだね。」長旅のせいか、
男はやや、そっけなく、そう答えた。
女性は、その事に気付いていたが
気にも留めていない様子で、
男の荷物を一部持ち、
案内された部屋へと進んだ。
「きれいな部屋だ。」男は言った。
「うん。そうね。」彼女は答えた。
「それでは夕食は18時頃にご用意しますので」
仲居さんはそう言って、部屋のドアを閉めた。
ー8/2(日)