「ハーモニーのブルース」

 気品
 彼はそう思った。

 目の前の男友達に、彼女ができるためには何が必要かを考えていたのだ。
 女性が一緒に居たくなる男って、結局、常に一定の距離を保てる男。一言で言えば、依存しない男じゃないかと。
 どんなことがあっても、彼女との間には、ラインがあって、彼女の領域に、勝手に踏み込んだりしない。その心構え、そんな気品じゃないか、なんてことを彼は思っていた。
 そしてそれは自分にも当てはまることだとも。

 彼はそのことをその友達に伝えようと思っていた。
 しかし、そんなことを勝手に考えて、かつ同じ、彼女が居ない同士で、上から物を言うようなマネになるなと無意識に思った彼は、その考えを、そのままにしておいた。

 カフェラテは甘ったるく、すぐに飲み終えてしまった。
 窓の外のカップル達にも気品が存在しているのかなと考えた。やはり存在している様に見えた。少なくとも、皆どこか、格好良く見えた。

 あくびを一つして、「そろそろいこーか」と彼は言った。―5/31(日)

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