「OLD FASHIONED」

僕は彼女と並んで座っていた。
平日の午後三時だった。
二人とも、何も言わなかった。
もう長いこと。風は冷たいのに、
二人とも、帰ろうなんて、言わなかった。
ただ、座っていた。
僕はただ、何も言う言葉が見つからなかっただけだった。
彼女の表情は、怒ってる様にも、真剣な様にも、今にも泣き出し
そうにも見えた。
そういえば。と僕は思った。彼女の怒った顔が見たくて付き合ったんだった
なと。
けど、付き合ってみると、彼女はいつも笑顔で。僕はついに彼女の
怒った顔を一度も見なかった。
「ねえ。」と彼女は言った。前を見たまま。
僕はゆっくりと立ち上がって、彼女の手をとった。
「歩きながらで。」と言った。
彼女の事が本当はたまらなく好きだった。
けど、彼女は僕に、何かが違っていると、そう思わせるのだった。
「あのね。」といつもの調子で彼女は話し始めた。
僕はいつもより強く彼女の手をにぎって、彼女の言葉を聞いていた。―4/4(土)

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