花が一つあった。皆はその花を見ながら通り過ぎた。猫がやって来て、その花の臭いをかいだ。花は思っていた、﹁なんで皆、こっちをじろじろ見るのかしら、ウンザリだわ。おまけに、ここからは動きたくても動けやしない。﹂ある男はある日、道を歩いていた。ふと気付くと、道に一つの花が咲いていた。少し目をやって、男は歩き続けた。猫がこっちを見ていた。﹁ごきげんよう。﹂男はいつもの様に挨拶した。猫はいつも思っていた。﹁何だって毎日、言葉をかけてくるんだろう。うっとうしくてしょうがない。﹂ある女性が道を歩いていた。﹁こんにちは。﹂女性はいつも擦れ違う男性に、今日初めて声をかけた。良い天気だったからだ。﹁良い天気ですね。﹂男も、毎日擦れ違う女性に声をかけた、いつも、この人とすれ違うことを実は楽しみにしていたのだ。二人はそのうち、並んで道を歩く様になった。二人は道の花に目をやり、その美しさを褒め、猫には男が挨拶した。 そのうち、花は二人の事が好きになった。二人が通るのを楽しみにする様になった。猫は男に﹁ニャ丨﹂と一言返事を返す様になった。まあ一言くらい返してやっても良いかと思ったのだった。︱12/21(日)