「います。」
付き合ってる人が居るのかの問いに彼女は迷いなくはっきりと答えた。
私の心臓のあたりに、みぞおちのあたりに鉛が入った様な気持ちになったが、
そんな事実は、たった今までとても良いかんじに過ごしてきたのは一体…?とかを発生させるようなインパクトのある話でも、何でもないという風に「あっそうなんですね。」なんて相づちを打ってみたものの消える訳でもなく。
僕はまた、
「デジャブかな、前にもたしか…」とか思いつつ、その場をやり過ごした。
彼女の顔には、そう、とてもすまなそうな、だけども、それがあなたにとって何?と問う様な、もしくは少し残念そうな、表情があって、ああ。
僕は、その後しばらくは彼女の瞳を見られなくて、人生は、人生ってやつはああかくも無常なのね。と思いつつ日本酒をちびちびとやっていた。
彼女から与えられることに慣れすぎていた私は、更に、彼女から、無償で愛だけを貰おうとしていた様だ。こちらからは何を与えられるかも考えもせず。
だとすれば、他の男から、彼女が愛を受け取っている事実は私にとって望むところであるはずなんだけれども、こんなにみじめになるのは、私がmotherの愛情をねだる子どもの様に未熟だからなのかもしれない。(いや、そうだろう。)
自立した男になるには愛情は不要なのか?
いや、万人にとって愛なんてものは、ほんの少しでも満足できるものだと思う。
みじめなのは、みじめだと思うからであって…。豊かさはそこら中にころがっていて。
欲しい物が手に入らないと我慢できないやつのみに発生るする因果なのでありまして。
自分を教育しなおす必要がありそうだってことに今になって気が付いた次第なのであります。