「WATER」

たのしさや、ゆたかさってやつを感じていこう。
たのしさや、ゆたかさってやつを。軽い笑いを。感じていこう。
水の中に背中からドボンと落ちた。ゆっくりと沈んでいく。
光からは遠のき、静かな無重力へ吸い込まれていく。そんな闇の中へ。
ふと思った。何も感じなくて良いと。ただ沈め。
そうして、何も見えなくなって。体は無くなって。意識も無くなって。
湯船から体を起こすと、いつもの風呂場で。耳を澄ますと、
彼女がテレビを見ながら鼻歌を唄ってるのが聞こえる。
ぼんやりしながら体を拭いて、彼女に「上がったよ」と声をかける。
いつもの金曜日の夜だった。いつもの金曜日の夜だった。
彼女がお風呂から上がるのを待ちながら。
僕はいつも
先に眠ってしまう。テレビの音はぼんやりと聞こえ、彼女は
ご機嫌にシャワーを浴びてるのが聞こえる。僕は先に眠ってしまう。
眠たい。とても眠たい。彼女の良い匂いがしてくる。
お楽しみのはずが、僕は先に眠ってしまう。
彼女より先に、いつも僕は眠ってしまう。―4/1(木)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください